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多様性の科学

Date
December 11, 2023 1:12 PM (GMT+9)
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📖 読書感想文

同質性は早さや強さを持つかも知れないが、知らず知らずのうちに可能性を狭める

諜報機関の「CIA」は9.11事件を何故未然に防ぐことができなかったのかというテーマ

最高の人材を要する機関で厳格な人事採用基準を設けている事もあり、間違いなく並外れた人材を採用してきたはず。CIAの中では「能力の高さを多様性は両立しない」という考え方が長い間主流。二重スパイなどの懸念などもあり、民族的マイノリティのさいよ言うなどにも消極的。能力が全てで結果として肌の色や性別が皆同じな同質性が高まるが、最高な能力が集まることが大事であった。

と、CIAの組織の特徴から話が始まる。

そして、個人個人の能力や洞察力はとても高いが、同質性が高い組織であるがゆえに、集団として盲目としてなってしまうパラドクスに陥ってしまい、結果「ありえない」と思う事に対する否定が生まれず、9.11につながる様々な可能性を検知はしつつも、それを疑う事無く当日を迎えてしまった。

このパラドクスの中にこそ、多様性の大切さが浮かび上がってくる

多様性に関わる性質に関しての実験として「日本人とアメリカ人の2つのグループに、水中の様子を見せたアニメーションを見せた後で、それぞれに何が見えたか?と質問を行う」があります。

アメリカ人は魚について語った。彼らは魚に関して細部まで詳細に覚えている様子だった。「大きな魚が3匹、左に向かって泳いでいました。お腹が白くてピンクの斑点がありました」。一方、日本人は背景について語った。「川のような流れがあって、水は緑色でした。底には石や貝や水草が見えました。ああ、そう言えば魚が3匹、左のほうへ泳いでいきました 16」 2つのグループはまるで別々のアニメーションを見ていたかのようだ。これにはそれぞれの文化の違いが影響している。アメリカは個人社会の傾向が強く、日本はより相互依存的だ。アメリカ人は手前や中心にある「もの」に重点を置き、日本人は「背景」に着目する傾向が見られた

更に

同実験の次の段階では、被験者は別の場所の水中の様子を見る。そこには前回と同じものもあれば、違うものもある。しかし日本人はそれを識別できない割合が高かった。それよりも背景が変わったことのほうに意識が向いていた。逆にアメリカ人は、背景が変わったことに気づかない割合が高かった。
人の物事のとらえ方には――ただものを見るという単純な行動にさえ――文化に基づく違いがあるという事実が明らかになった

この例で言いたかった事としては、同じ物を見ても気づきは異なるが、文化など同質性が高い事で、同じ観点にフォーカスしてしまい、それ以外に気づけ無い可能性があるという話。

そして

人は不完全なものの見方をするが、違う見方をする者同士が協力し合えば、1人のときよりも多くの発見を得られる個人個人で見れば見落としは多いかもしれない。いわばみな間違っている。しかしその間違いの方向はそれぞれに異なる。つまりそれらを共有し合えば、濃密かつ精密な全体像を描き出せる
どれだけ優秀でも、同じ特徴の者ばかりを集めた多様性に欠けるチームでは、集合知を得られず高いパフォーマンスを発揮できないという話

つまり、同じ目的のためにそれぞれの観点を活かして協力する事で、これまで気づけなかった事に気づける可能性がある。多様性が高いほうが確かに意見の対立などは増えるかもしれないが、それは気づきが異なるからこそでもあるので、その気づきをぶつけ合う事で同質性が高いときには気づけなかった事実に気づける確立が高まる。という話

異なる視点に向き合う事で、浮かびもしなかった重要な可能性につながる

  • イングランドサッカー協会(FA)の技術諮問委員会に従来の「あたりまえ」なサッカー関係者だけではなく、起業家、陸軍士官、IT起業家、ロードバイクのマネージャなどサッカーに関係のない業界のメンバーが招集された事で、従来と異なる気づきが生まれた
  • ロードバイクの大会の前の食事と運動の改善。陸軍のメンタルの鍛え方、起業家の組織に革新を齎すアイデアなどなど、内容としては本当にサッカー以外の話ではあるが、本質的な意味では学びとなる事が多い。似た経験や物の見方をして、同じような固定概念に囚われたかもしれない。そして同じ業界だからこそ様々な事が「あたりまえ」となり、当たり前を疑う話にならない。業界の外側に居るからこそ、その「あたりまえ」に疑問をもてたり、「あたりまえ」を否定できる。
  • もし1人でなら問題ないが、集団となるとそうはいかない。もし似たような集団があつまると1人の時よりは可能性は広がるが、大きくそれることは無い。本書ではクローン集団とかかれている。クローン集団は同じような考え方をするので、安心する。つまりコンフォートゾーン。みんなと同じ考えだと自分は正しいと思えてくる。
  • イギリスでは過去に「人頭税」という誰もが同じ額の税金を払うという精度が実施された。一部の限られたヒトが、全体ではなく一部のデータを見て決めたことで、苦しい生活をしているヒトの存在を考慮する事ができなかった話につながる。もし1人でも違う経済状況を経験していたら話は違ったかもしれない。

たとえ多様性が進んでも、やはり完全とはいかない。だからこそ大事なことは視点を広げて、無意識のうちに消してしまってる可能性が無いかなどを考えること。もしかしたら同質的に話し合いをしてしまっていないかと疑うこと。

例えば男性だけで女性の活躍する環境を考えても、きっと女性にとってはでてこない。男性が思う女性という視点が強く出てしまう。

ただ「意図的に女性を除外してきたわけではなく、ただ頭に浮かばなかっただけ」という問題。だからこそ仮に男性だけで話す事になっても、このまま進める事は危険だ。女性の声を聞こうみたいなアクションで多様な意見に向き合う事は大切

VUCAな状況でこそ多様な視点やアイデアが重要。ヒエラルキーなど支配的な環境下では「異議」など、多様な意見がでず、正しい判断が出来ない。

登山では、Volatile(不安定), Uncertain(不確実), Complex(複雑), Ambiguous(曖昧)な環境で行う活動。例えばリーダがすべての意思決定を行う。リーダの意見が正しい。という力が強すぎる場合、リーダの知識や経験、そして現在リーダが気づいている事でしか判断ができなくなる。つまりもし重要な事に気づいて無くても、判断をすることになるため取り返しが付かない状態になってしまう。

登山の場合、登っている場所が違えばそもそも見えるものが違う。一緒に登っている仲間の消耗状態も、直面している問題も、雲の厚さもみな異なる。どれもほかの地点を登っている者には見えない。しかし1人なら目は2つしかないが、チームになればその数も増え、それがさまざまな判断に役立つ。そこで重要なのが、有益な情報や視点の「共有」だ。これは多様性が大きな魔法の力を発揮する上で欠かせない。いくら個人が有益な情報を持っていても、それが表明され、共有されなければ、意味はない

もし部下の1人がリスクに気づいていても進言出来なければ正しい意思決定に繋がらない。この気付きには自分と違う考えや視点を持つものがいるという認識が重要。そしてそれだけではなく進言してほしい。正しく判断するために異なる意見であっても言ってほしいなど

が高い状態を作る事も重要。

複雑な状況下では、たとえどれだけ互いに献身的なチームであろうと、多様な視点や意見が押しつぶされている限り、あるいは重要な情報が共有されない限り、適切な意思決定はなされない。ホールは、心ならずもチームの順位制を強めてしまったために、生死を分ける判断に欠かせない情報を得ることができなかった。 結果、自身の命を犠牲にすることとなった。

本の中では、結果としては適切に判断が出来なかったため、最悪となったと書かれている。

尊敬型の集団の場合、リーダーの寛容な態度が従属者に次々とコピーされ、集団全体が協力的な体制を築いていく。尊敬型のリーダーが知恵を共有すれば、たしかにほかの誰かが有利になることもあるが、集団全体に寛容で協力的な態度が浸透するメリットも大きい。人を助けることで、相手ばかりでなく結局自分にもプラスになるという、いわゆる「ポジティブ・サム」的な環境が強化される。尊敬型ヒエラルキーはこうして発展してき良い結果につながる

「支配型のヒエラルキー」に対する事ばとして「尊敬型の集団」とある。この集団ではリーダは自分のメリットではなく、チームのために情報を発信する。それがまわりまわって自分にもプラスとなる。そのような体制となることで

が向上することに繋がり、結果として角度の高い意思決定ができる状態につながるとある

多様性がイノベーションを加速させる

問題の本質を見抜くには、「あたりまえ」となっている物事を、第三者の視点で見つめ直す事が大切。新しい視点で見る事で、見落としていた可能性やチャンスが明確に見えてくる。

一つの例として

「タクシー会社にはタクシーがある」は「あたりまえ」かもしれないが、「タクシー会社にはタクシーが無い」はありえない話だった。しかし現在「タクシーを所持しないタクシー会社」が存在している。名前はUber

心理学者は「概念的距離」という表現を使う。人々は一つの問題に没頭していると、より深く引き込まれていく。すると底にいるほうが気持ちよくなる。この対象から概念的に距離を取ってみると新しい視点が生まれる。それが新しい情報を得るわけではないが、新しい角度から見ることで新しい気づきや、より正しいと実感が湧くなど。物事を俯瞰してみられるようになる。

組織の多様化によって「気づきを得る」も大事だが、ここではそもそも自分の中の「あたりまえ」を疑い自分自身を改革するすべを身に着けていく事も大切と書かれている。現状に疑問を持ち、従来の枠組みを飛び越えていく力

ヒトが多く多様性が高い状態でも、ヒトは自然と自分に近い(もしくは正当化される)環境に身を置く(エコーチャンバー現象)

数と多様性には逆説的な結果を生む動きがある。

多様性が豊かで多くのヒトが居る大学では、結果的に似た境遇や出身の人達でのグループが出来上がる。

「自分と似ているヒトと仲良くなりたい」と思ったら探せば出会えてしまうからとある。

逆に、小規模な学校では大規模に比べると多様性は低いかもしれないが、自分と異なるヒトとのつながりを作る必要性が高まる

このように多様性が豊かな環境は、矛盾した現象が生まれる。そしてそれはインターネット上でも実社会でも同じ事が起きる。世界が広がれば広がる程、人々の視野が狭まっていく

現代社会の特徴的な問題の一つとして

がある。

  • 「エコーチャンバー」閉鎖されていない環境にあり、「自分との反対意見」が入ってくるが、この「反対意見」を聞けば聞くほど、自分の意見の方が正しいという気持ちが強まる現象
  • 「エコーチャンバー」の内側に居てるヒトにとって「反対意見」はフェイクニュースという受け取りかたになる

更にインターネットなどで多くの情報を取得できるようになったがゆえに、自分の興味関心や偏見に合う情報だけを取得する「Daily Me」を作る事で世界を狭めているヒトもいる。

趣味や好みの話がしたいという目的であれば、反対意見は邪魔になる。その場合は多様性は邪魔ということになる。

政治問題など複雑な話題に関しては、多様性を排除してしまう事で、エコーチャンバー現象によって現実が歪んで見え始める。

SNSで友人がシェアする情報や、自分と考え方が合う人、自分に対して肯定的な意見をくれるヒトの情報に触れる機会が増えて、反対意見に触れる機会が減る。そしてこの傾向は「

」によって更に狭まる。

  • フィルターバブル
    」つまり閉鎖された情報の偏る環境にいることで認識する現実が歪む。

ここでは「ヒトは多様な情報や視点から切り離されると、極端な思考に傾きやすくなる」と解かれている。

単純な二項問題ではなく、複雑な問題の場合は、様々な意見や情報、そしてデマも多くなる。対立も多くなるがそれは考え方の違いであってどちらかが正解不正解ではない。だらこそデータや事実を大切にして、可能性を議論して行くことが大切

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